着衣水泳の「UITEMATE」 世界の合言葉に
兵庫県の赤穂市消防本部の救急救命士で、一般社団法人水難学会(事務局・新潟県長岡市)の事務局長を務める男性が、水難事故に遭った際、水面に浮いて救助を待つ日本発祥の「着衣水泳」を東南アジアで教えている。既にインドネシアなど4カ国でライフセーバーらに伝授した。スコールなど豪雨が多発する国々で「UITEMATE(浮いて待て)」の合言葉が広がる。(西竹唯太朗)
赤穂市消防本部の警防課主幹木村隆彦さん(54)=同市塩屋。水泳のインストラクターとして日赤の「水上安全法指導員」資格を取得し、救助員を養成するうち、「命を救う仕事がしたい」と22歳で消防職員に転職した。2003年には、水難学会の前身「着衣泳研究会」を有識者らと設立。着衣水泳の普及に取り組み始めた。
着衣水泳は体の力を抜き、あおむけで顔を水面に出して救助を待つ。泳力に関係なく習得できるのが特徴で、国内では「浮いて待て」を合言葉に、同学会で約8万3千人に指導してきた。
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海外普及のきっかけは11年、水難事故の防止を目的にベトナムで開かれた国際学会。スコールなどで水難事故が多発する東南アジア各国の参加者が、子どもでもできる手法に興味を持ったという。
以来、指導の依頼が相次ぎ、インドネシアをはじめマレーシア、スリランカ、タイで計約200人に教えた。着衣水泳は「UITEMATE」の名前で浸透し、指導を受けた現地のライフセーバーや教師らが普及を進めている。
フィリピン、台湾、アフリカのコンゴ共和国などからも依頼があるといい、木村さんは「各国で合言葉が広がりつつある。一人でも多くの命を救うため、さらに普及を続けたい」と話す。
【着衣水泳】 「着衣泳」とも呼ばれる。1970年代、日本の水泳指導者らが研究に着手した。真水の場合、人間が息を吸うと体積の2%が水面上に出ることや、靴や服の浮力を利用。鼻と口を水面に出して呼吸を確保するため、あおむけで背筋を伸ばして体の力を抜き、手足を軽く開いて浮く。体力の消耗も防げる。
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