アメーバ赤痢 – 寄生虫シリーズ
アメーバ赤痢は、赤痢アメ−バ嚢子(のうし)に汚染された飲食物などの経口摂取によって成立します。嚢子は体表に膜をかぶって休眠した原生動物のことで、赤痢アメ−バ嚢子は胃を経て小腸に達し、分裂を繰り返して大腸に到達します。大腸では粘膜面に潰瘍性病変を形成し、粘血便を主体とする赤痢アメ−バ性大腸炎を発症させます。大腸炎症例のうち5%程度が腸管外病変を形成し、その大部分は肝膿瘍です。まれに心嚢、肺、脳、皮膚などの赤痢アメ−バ症も報告されています。感染者の多くは発展途上国に集中しており、多くの先進国では一般の人々の間に流行はしていません。先進国で感染率が高い集団は男性同性愛者、発展途上国からの帰国者、知的障害者施設収容者などです。赤痢アメーバ感染症による全世界の死亡者数は毎年4〜7万人とされています。日本のアメーバ赤痢患者数は1990年代には100〜200人でしたが、2000年以降に急増し、2001年には400人を超えました。
アメーバ赤痢の病原体
アメーバ赤痢の原因は、原虫の赤痢アメ−バで、全世界の人口の10%(約5億人)に感染しているとされています。感染者の糞便からは赤痢アメ−バと同定される原虫が検出されますが、赤痢アメ−バは病原種と非病原種の2種類あることがわかり、その割合は1:9程度と考えられています。
アメーバ赤痢の症状
アメ−バ赤痢大腸炎の症状は、粘血便をはじめとし、下痢、しぶり腹、下腹部痛などの赤痢症状です。肝膿瘍などの合併症を伴わない限り、発熱はほとんどありません。数週程度の周期で症状の増悪・寛解を繰り返し、慢性に経過しますが、全身状態は侵されず、患者は通常の社会生活を営むことができます。アメーバ赤痢の患者には、医療機関で潰瘍性大腸炎と誤診され、長年にわたって投薬を受けている例もあります。アメ−バ感染症は副腎皮質ステロイド剤投与で増悪するため、潰瘍性大腸炎として治療されている症例では、腸穿孔を合併して急変することがあります。
アメーバ赤痢の治療
病原種の赤痢アメ−バに感染した患者のみが治療の対象とされています。赤痢アメ−バ症に対する国際的標準治療薬はメトロニダゾ−ルで、顕著な治療効果が示されています。
[adrotate group=”7″]
[adrotate group=”8″]
メンバー限定(登録は無料)のコンテンツとなります。
[adrotate group="7"] [adrotate group="8"]