筋肉、関節などの異常発見 学校の健康診断で「運動器検診」
現代っ子の体力低下が指摘される中で、全国の学校で実施されている健康診断に、4月から筋肉や骨、関節の異常を見つける「運動器検診」が加わった。片足でふらつかずに立てるか、足の裏をつけてしゃがむことができるかなど5項目程度。家庭と学校、医療が一体となって異常を早期に見つけ、治療につなげる。
家で事前チェック 治療につなぐ
運動器とは、骨や筋肉、関節、腱(けん)、神経など体を支えて動かすために欠かせない器官の総称。体が硬く、体力や運動能力の低い子どもが増えているため、小学校から高校までで運動器検診が本年度義務化された。
検査はまず、家庭で保護者が、問診票に従い子どもが片足立ちでふらつかないか、足の裏を全部床につけてしゃがめるかなどについてできるかどうかをチェックする。
その結果を学校に報告し、学校の健康診断の際に、学校医が肩や背中の高さに左右で差がないかなどを検査。腰を曲げて痛みが出る場合は、椎間板ヘルニアや疲労骨折の一種である腰椎分離症などが疑われるため、整形外科を受診させる。
日本学校保健会が示した健診マニュアルでは、五項目を判定基準=イラスト参照=にしており、自治体が独自に検査項目を追加する場合もある。
東京都立川市は毎年秋、運動器検診と同内容の「整形外科検診」を実施し、整形外科医三人が市内の小中学校約三十校を手分けして診察してきた。東京都臨床整形外科医会理事の古岡邦人医師は昨年の検診で十校を担当したが、診察した児童生徒約千人のうち、再検査や治療のために整形外科を受診させたのは約一割に達した。
古岡医師は、バランス感覚が鈍い子どもが増えていると実感したといい、「骨格のゆがみなどが運動事故につながる恐れがあるため、検診で異常を早期に見つけることは重要」と強調する。
関節が硬い場合は電気治療を行ったり、背骨がねじれを伴い曲がる「脊柱側彎(そくわん)症」の子どもには、四つんばいで腰を上下する体操などを毎日続けてもらったりした。
課題は、運動器検診を学校で行うのは、ほとんどが校医の内科医であること。同市でも六月末まで実施中の運動器検診を担当しているのは内科医だ。古岡医師は「専門外の内科医が、体のゆがみなどの異常を見つけるのは難しく負担も重い。自治体と医師会が連携して、整形外科医が検診を行う体制を整える必要がある」と話す。(細川暁子)
深刻な「運動不足」「過多」の子どもも
子どもの体力低下は、学校での運動事故の増加に裏付けられている。
体育の授業やクラブ活動中に起きた事故で医療費を給付している日本スポーツ振興センター(JSC)によると、給付制度に加入する小中高校生は一九八三年度に比べて二〇一四年度は四割減ったにもかかわらず、事故は一四年度に約五十三万二千件が発生し、一九八三年度の一・四倍に達した。
運動事故多発の理由を、日体大総合研究所(東京都世田谷区)の武藤芳照所長は「外遊びが減り、運動不足の子が多いことが一因」とみる。
運動を十分にしないと筋肉が発達せず、五十肩のように万歳をしても両手が上がらなかったり、転んだ時に手をついて支えられず地面に顔を打ち付けたりといった事態を招く。一方、運動のしすぎで疲労骨折を起こす子どもも多く、運動不足と運動過多の二極化が顕著だという。
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