フッ素を利用したむし歯予防 – 歯・口腔の健康シリーズ
むし歯を作る要因は、歯の質・細菌(むし歯原因菌)・食物(砂糖)の3つにまとめることができます。それぞれの要因に対応する形でむし歯予防法は、フッ化物応用とシーラント・歯みがきの励行・糖分を含む食品の摂取頻度の制限にまとめることができます。これらの予防法が、家庭で・地域で・保健サービスの現場で、バランスよく組み合わされて行われることが必要です。従来から行われてきた「歯みがきの励行」、「糖分を含む食品の摂取頻度の制限」という方法は、正しく実施されればある程度の効果は期待できますが、これらの方法は現実的には広範囲の人々の理想的な実践を期待することは困難です。一方で、フッ化物を集団的に用いた場合、その方法は簡単で費用対効果に優れており、多くの人々が参加できるなど公衆衛生的な特性を備えています。公衆衛生的な手法でフッ化物を応用すれば高いむし歯予防効果が期待できます。シーラントは、奥歯の溝を物理的に封鎖したりシーラント材の中に含まれるフッ化物により再石灰化作用を促進するむし歯予防法です。特にフッ化物応用との併用によってむし歯予防効果はさらに増加します。むし歯発症リスクの高い歯に行うと特に有効です。
フッ化物の利用
フッ化物の利用は、歯質のむし歯抵抗性(耐酸性の獲得・結晶性の向上・再石灰化の促進)を高めてむし歯を予防する方法です。全身応用(経口的に摂取されたフッ化物を歯の形成期にエナメル質に作用させる)と局所応用(フッ化物を直接歯面に作用させる)があります。有効性・安全性に関する証拠が確認されています。
フッ素は化学的に合成されたものではなく、自然界に広く分布し、地球上のすべての動・植物にも、毎日飲む水や食べる海産物・肉・野菜・果物・お茶などほとんどの食品に微量ながら含まれています。私たちの身体(歯や骨、血液中や軟組織)にも存在しています。経口的に摂取されたフッ化物は、歯の形成期にエナメル質に取り込まれ、むし歯抵抗性の高い歯が形成されます。またフッ化物は、歯の表面にも直接作用します。
フッ化物のむし歯予防メカニズム
- 脱灰抑制作用
エナメル質結晶内に取り込まれたフッ化物によって、エナメル質の一部がハイドロキシアパタイト(HAP)よりも「溶解度」の低いフルオロアパタイト(FAP)やフッ化ハイドロキシアパタイト(FHAP)として存在し、酸抵抗性を持ちます。 - 脱再石灰化促進作用
フッ化物が存在することで、脱灰エナメル質中のブルーシャイトなどリン酸カルシウムの反応性が高まり、HAPに転化し、さらに「溶解度」の低いFHAPやFAPに変化していきます。 - 脱プラーク細菌の酸産生抑制
フッ化物がプラーク(歯垢)中に取り込まれると、細菌の代謝系酵素を阻害して酸産生を抑制します。同時に細胞膜の透過性を高めて細胞外にフッ化物を出してプラークのフッ化物濃度を高めます。細菌が糖を発酵させて酸を作ると、プラーク中のフッ化物が脱灰に対して抑制的に働きます。
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