「オートファジー」 その驚きの仕組みとは
ノーベル医学・生理学賞の受賞者に選ばれた東京工業大学栄誉教授の大隅良典さん(71)が解明した「オートファジー」。 私たちが生命活動を維持する上で欠かせない細胞のたんぱく質をリサイクルするという、この驚きの仕組みについて、詳しく解説します。
30兆個以上の細胞からつくられる私たちの体。その細胞ひとつひとつが、生命活動を維持する上で、欠かせないのがたんぱく質です。その数、2万種類以上と言われ、体のさまざまな組織や臓器を形づくっています。
このたんぱく質のうち、不要になったものを分解し、必要なものに作り替える、いわば、リサイクルの仕組みが「オートファジー」です。不要なものは、膜に包み込み、酵素を注入します。すると、あたかも食べたものが胃の中で消化されるように分解されるのです。
分解されたたんぱく質はリサイクルされ、新しくたんぱく質を造るための材料になります。私たちが一定期間食事をとらなくても生きていけるのは、このオートファジーがあるからだとされています。
生まれたばかりの赤ちゃんを支えているのも、このオートファジーです。胎盤を介して母親から栄養を得ていた赤ちゃんが産まれてからミルクを飲めるようになるまでの間、栄養不足にならないのはオートファジーの仕組みで栄養を補っているからだとみられています。
オートファジーの働きを抑えた新生児のマウスは、通常のマウスに比べて栄養不足が激しく、寿命も短かいことが実験で確認されたということです。
一方、何らかの原因で、このオートファジーがうまく働かなくなると不要なたんぱく質が細胞の中にどんどんたまっていってしまいます。アルツハイマー病やパーキンソン病などは、神経細胞の中に蓄積した、こうしたたんぱく質によって引き起こされているのではないかと考えられています。
また、年齢を重ねることで老化によってオートファジーの働きが弱まり、これが、がんや糖尿病などさまざまな病気と関係しているのではないかとも考えられています。
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