ダニ媒介性脳炎 – ダニ媒介感染症シリーズ
ダニ媒介性脳炎は、マダニ科に属する各種のマダニによって媒介されるフラビウイルス感染症で、終末宿主であるヒトに急性脳炎をおこします。蚊によって媒介される日本脳炎とは異なり、ダニ媒介性脳炎はマダニが媒介します。マダニは、沢に沿った斜面や森林の笹原、あるいは牧草地などに生息し、家の中や人の管理の行き届いた場所には、ほとんど生息しません。主にロシア春夏脳炎ウイルスと中部ヨーロッパ脳炎ウイルスがあり、世界のダニ脳炎患者数は、患者数の集計が整った1990年以降毎年6,000人以上発生し、多い年には10,000人前後発生しています。ヒトへの感染は、ダニによる刺咬だけでなく、感染したヤギや羊の原乳を飲んでも感染します。
ダニ媒介性脳炎の病原体
ダニ媒介性脳炎はフラビウイルス感染症で、フラビウイルスは、日本脳炎ウイルス、デングウイルス、ウエストナイルウイルスなど全世界で公衆衛生学的問題となる感染症を起こす病原体を多く含んでいます。これらウイルスはヒト以外の哺乳動物や鳥類が保有宿主・増幅動物となり、蚊またはダニによって媒介されるため、自然界から完全に排除することは不可能です。
ダニ媒介性脳炎の症状
中部ヨーロッパ脳炎の潜伏期間は7〜14日で、二相性の病状があらわれます。第一期は、インフルエンザ様の発熱・頭痛・筋肉痛が1週間程度続きます。この第一期は約半数で認められない場合もあります。解熱後2〜3 日間は症状が消え、その後第二期にはいり痙攣・眩暈・知覚異常などの中枢神経系症状があらわれます。脳炎、髄膜脳炎あるいは髄膜炎の形をとり、脊髄炎は伴いません。麻痺症状は3〜23%に認められ、死亡率は1〜5%とされています。後遺症としては感覚障害が主なものですが、平衡感覚障害、感音性難聴などもあります。後遺症の頻度は35〜60%とされています。潜伏期間は7〜14日ですが、中部ヨーロッパ脳炎のような二相性の病状はあらわれません。潜伏期の後に頭痛・発熱・悪心・嘔吐が見られ、極期には精神錯乱・昏睡・痙攣および麻痺などの脳炎症状が出現することもあります。中部ヨーロッパ脳炎と比べて致死率は高く、30%です。
ダニ媒介性脳炎の予防
予防法としては不活化ワクチンの接種があり、ヨーロッパではリスクのある者ヘの接種が行われていますが、我が国では市販されていません。ワクチンは、中部ヨーロッパ脳炎、ロシア春夏脳炎双方に有効です。流行のある地域の森林地帯でダニに刺されなければ、リスクはそれ程高くありません。森林地帯に入る場合は、ダニに刺されないようにすることが最大の予防策です。長袖・長ズボンを着用し、靴は足を完全に覆うものを選び、サンダルのようなものは履かないようにしましょう。
[adrotate group=”7″]
[adrotate group=”8″]
メンバー限定(登録は無料)のコンテンツとなります。
[adrotate group="7"] [adrotate group="8"]