<岩手県>「拭いても拭いても」台風浸水家屋、カビに悩む
台風10号による豪雨で、浸水被害を受けた岩手県宮古市や岩泉町などの住宅でカビが次々と発生し、復旧作業にあたる住民の衛生環境が問題となっている。
カビを吸い込むと肺炎を引き起こす恐れもあり、県は作業の際は換気やマスクの着用などの対策を呼びかけている。
宮古市蟇目ひきめの飛沢利有治りうじさん(84)は、床板に生えたカビを見ながら、「拭いても拭いても、何度も出てくるなあ」と諦め顔だ。
台風10号が上陸した8月30日、近くを流れる閉伊川が氾濫し、自宅は床上85センチまで浸水した。室内まで押し寄せた泥は8割ほど取り除いたが、今度は「カビ被害」に悩まされるようになった。今は床板をはがし、防カビ処理に追われている。
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岩泉町岩泉にある実家で復旧作業を行う佐藤寛治さん(71)も、室内のあらゆる場所に発生したカビを見て、「手の打ちようがない」と途方に暮れる。豪雨で2メートル以上の高さまで浸水。実家に一人で暮らしていたおいは高台に逃げて無事だったが、病気を患っているため、茨城県で暮らす佐藤さんが帰省して作業している。被災後すぐに取りかかれなかったため、玄関や壁、柱などがカビだらけになった。佐藤さんは、「これでは修復しても、もう住めない」と肩を落とす。
県のまとめでは、16日現在、台風10号により宮古市や久慈市などの住宅908棟が全半壊し、16市町村の1375棟が床上・床下浸水した。いずれも住民らが泥のかき出し作業を行っており、衛生環境が悪い中、健康面への影響が懸念される。
県医療政策室によると、水害で浸水した住宅で作業すると、カビを吸い込んでアレルギー性の肺炎になるなど感染症のリスクが高まるという。医師や看護師らでつくる「いわて感染制御支援チーム」は、県のホームページで日本環境感染学会(東京都)が示した衛生対策のポイントを紹介している。浸水被害から時間が経過した住宅では、室内にカビが充満している可能性があるため、入室前に30分以上換気することを呼びかけている。
同室はまた、がれきの後片付けなどの際にくぎやガラスの破片が手や足に刺さり、傷口から菌が入って破傷風にかかる恐れがあるとして注意喚起している。重症化すると呼吸困難になって死ぬ場合があり、ゴム手袋や長靴を身に着けて作業することを呼びかけている。
同室の小野泰司感染症担当課長は、「復旧作業を優先しがちで、健康面の対応は二の次になりやすい。衛生状態が悪化しているのを理解し、マスクやゴーグルをつけるなど十分な対策をしてほしい」と話している。(高橋学)
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