「ヘルパンギーナ」本格的流行始まる 免疫力弱まる夏、重症化する前に早期受診して
夏に乳幼児がかかりやすいウイルス性の感染症「ヘルパンギーナ」が本格的に流行し始めた。今年の第24週(6月13~19日)時点で、全国の定点医療機関(小児科計約3千カ所)当たりの患者数は0・91人となり、11週連続で増加。効果的な予防や治療の方法がないため、早期受診で重症化を防ぐことが大切だ。 (玉崎栄次)
5歳以下が9割
ヘルパンギーナは「夏かぜ」の一種。38度以上の高熱が出たり、口内に痛みを伴う水疱(すいほう)ができたりする。まれに心筋炎を引き起こし、心不全につながる恐れもある。感染者は免疫力の弱い5歳以下が9割以上で、ワクチンや特効薬はなく1週間ほどで治癒する。
国立感染症研究所によると、第24週の定点患者数の全国平均は前週比約1・7倍の0・91人。同期比で平成23年以降最多となった。
都道府県別では、鳥取の4・05人が最多で、香川3・86人、島根3人、大分2・97人と続き、上位20位までを西日本の府県が占めた。流行の兆しが出始めた第19週(5月9~15日、定点患者数0・11人)以降、17都府県で10~67倍に拡大している。
警報基準値超えも
ヘルパンギーナは例年、5~6月ごろから増え始め、7月下旬にピークとなる。原因となるウイルスは高温多湿の環境で増殖しやすいため、関東よりも梅雨入りが早く、気温が先に高まる西日本から流行が始まる傾向がある。
鳥取県では第24週時点に県西部地域で、国の警報基準値(定点患者数6人)を上回る6・57人を記録。県は全域に警報を発令した。
県衛生環境研究所の担当者は「今年は例年よりも早く流行が始まっている」と話している。
脱水症状に
感染研によると、飛沫(ひまつ)や接触により感染するため、うがいや手洗いが基本的な予防法となる。しかし、感染しても発熱や水疱などの症状が出ない場合もあるため、保育園や幼稚園などで感染が広がりやすい。
3歳と1歳の娘が感染した公務員の女性(29)=東京都板橋区=は「口の中に水疱ができ、痛がってごはんを食べるのを嫌がり、ゼリーくらいしか食べられなくなった。栄養を十分に取れているのかと不安になった」と話す。東京慈恵医大病院小児科の浦島充佳教授(小児科)は「乳幼児が感染すると飲食を嫌がるため、脱水症状を引き起こすなど重症化しやすいので、経口補水液などを使うことになる」と指摘する。効果的な治療法もないため、「子供の異常に気づいた場合は、早期に医療機関を受診して、高熱や脱水症状に対する治療を受けることを心がけてほしい」と注意を促している。
プール熱と手足口病も拡大「大人も注意」
ヘルパンギーナと合わせて「3大夏かぜ」と呼ばれ、乳幼児に流行しやすいプール熱(咽頭結膜熱)と手足口病にも注意が必要だ。今季は、いずれも大人が感染するケースも目立っている。
国立感染症研究所によると、プール熱の症状は、発熱や喉の腫れなど。第20週(5月16~22日)時点で定点患者数は0.56人だったが、翌週から増え始め、第24週(6月13~19日)には0.72人まで急増した。手足口病はあまり高熱は出ないが、口内や手足に発疹などができる。猛威を振るった昨年ほどではないが、6週連続で定点患者数が増え第24週は0.35人になった。
井荻クリニック(東京都杉並区)の石井慎二院長(内科・小児科)によると、今夏は大人の感染が目立つ。大人は過去に感染して抗体がある人が多いため、本来感染しにくいが、「今年は例年よりも早く暑くなった。暑さによる食欲不振などで免疫力が低下すれば感染する。症状が長引けば、別の感染症などにもかかりやすくなるため、重症化のリスクが高まる」と指摘している。
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