<大阪府> 府内の梅毒患者急増 5年で5倍、女性13倍
大阪府が今年、衝撃的な発表をした。府の梅毒患者報告数(2015年速報値)が5年間で約5倍、女性は約13倍に急増しているというのだ。1940年代のペニシリン(治療薬)普及以降発症が劇的に減少していたが、2010年以降患者数が増加傾向にある。なぜ、このような事態が起きているのか-。
府医療対策課によると、昨年の梅毒患者報告数は317人。過去5年で最も多かった=グラフ参照。特に若者の患者数が増加しており、10~20代が全体の37%(116人)を占める。
14年までは患者の約9割が男性だったが、昨年は女性の感染者が約3・5倍に急増し、報告数の約25%。同課は「感染拡大を心配している」と危機感を募らす。
性行為で感染
梅毒は性感染症の一つで、過去には大流行を引き起こし恐れられたが、治療が可能になったことで報告数は減っていた。感染経路は、92%が性行為による感染だ。
同性間、異性間でも感染するが、昨年の状況から異性間の性行為で感染が拡大していることが分かる。梅毒は「過去の病気」ではない、ということだ。
では、なぜ、いま患者数が増えているのか。
理由について同課は「不明」とする。府保健所などでの梅毒検査は匿名で受検できるため、詳しく背景を聞いていない。全国も同じ傾向にあるが、厚労省結核感染症課も「性感染症の研究班などで議論してもらっているが、これが理由だとは言えない」としている。
早期に受診を
梅毒は、感染力の強い細菌「梅毒トレポネーマ」が主に性行為で粘膜や皮膚の小さな傷口から侵入して感染する。コンドームを使用することで予防効果があるが、コンドームが覆わない部分の粘膜や皮膚に傷があると感染する可能性がある。
つまり、コンドームの使用で感染リスクは減らせるが、完全には防げないということだ。
大阪府立公衆衛生研究所の小島洋子主任研究員は「性的接触で感染するので、コンドームだけでは防ぎ切れない。症状が出ない人もあり、性交渉で広がっていく」と説明する。
増加に歯止めをかけるのも難しいようだ。男女の出会いの場は多岐にわたり、感染によって家庭の中にも入り込む。府は「性感染症にかかるリスクを回避する安全な性交渉が求められる」とする。
大切なのは、皮膚や粘膜にしこりやただれなどの症状があった場合は、性的な接触を控え、早期に医療機関で受診すること。感染が分かったらパートナーと一緒に検査、治療する。妊娠中は特に注意が必要だ。
梅毒は早期に治療(抗生剤を服用)すれば治る。検査や医療機関に「行きにくい疾患」でもあるが、厚労省はその点も含め啓発に努めていく考え。
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