<静岡県>伊東・下田の虐待死 家庭への即時介入検討を、静岡県検証部会が提言
子供が亡くなるような痛ましい児童虐待を未然に防ぐため、県児童虐待検証部会は30日、伊東市と下田市でいずれも2人の子供が亡くなった事案の検証結果をまとめ、県健康福祉部に提出した。
提言をまとめた高橋一弘前部会長は、「深刻な児童虐待事案が増えており、子供の安全を重視するには、児童相談所が家庭への即時介入を考えたり、早い段階で県警や医療機関と連携を強化することが重要だ」と指摘。提言には、望まない妊娠を原因とする虐待に対処するため、産婦人科医との連携を強化する必要性などが盛り込まれた。
2件で4人死亡
県内では近年、虐待が原因とみられる子供の死亡が相次いでいる。伊東市では平成24年から26年にかけて、2歳の男児と生後8カ月の女児のきょうだいが、いずれも頭部の外傷が原因で死亡しており、父親による虐待が強く疑われている。
とりわけ男児は、頭部に不自然なけががあると医療機関から3度通報があり、虐待を疑った児童相談所が一時保護。しかし家庭に戻してわずか1カ月後に死亡したことから、関係機関の対応が問題視された。
また、下田市では25年から26年にかけて、生まれたばかりの乳児と女児を、母親が衣装ケースに入れるなどして自宅で死なせた。周囲は妊娠に気付いており、母親は「中絶費用がなかった」と話していることから、妊婦への支援や望まない妊娠を防ぐ方策が論点になった。
対応の問題点は
検証部会ではこの2件について、行政側の対応を検証し、再発防止策を議論した。
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伊東市の事案については、子供を一時保護した児童相談所が事実関係がはっきりしない中で子供を家庭に戻すことを優先させたのではないかと指摘した上で、「頭部の外傷は緊急性が高く、即時介入してもよかった。リスクが高いと考えられる場合には支援から介入へと躊躇(ちゅうちょ)せず方針転換すべきだ」と提言。児童相談所が介入と支援という矛盾する役割を担う現行制度の問題点にも言及した。
下田市の事案からの教訓としては、産婦人科医との連携を強めて医療機関が把握した情報を虐待防止に生かす仕組みを構築したり、望まない妊娠・出産を防ぐ相談窓口の充実や妊婦に必要な情報を届ける重要性が盛り込まれた。
進む基準づくり
県では伊東市の事案の発覚直後に児童虐待案件の警察への連絡基準を初めて明文化し、虐待が確認できなくても子供の安全が憂慮される場合には積極的に緊急連絡を行うことを決めた。国は年内にも児童相談所が家庭に介入するタイミングの統一基準を策定する方針で、提言を受け取った県健康福祉部の山口重則部長は「県警や医療機関、市町と役割を分担しつつ連携を強めて、社会全体で子供を育て、虐待がゼロになるようにしたい」と語った。
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