自殺のサイン見逃さない
◆長期休暇明けに増加 相談しやすい環境に
夏休みが楽しみな子どもの中にも、学校関係で思い悩み、休み明けに自殺を選ぶケースがある。最悪の結果を招かないために、家が子どもにとって居心地よい場所か、悩みを相談してくる親子関係にあるかなどを、比較的時間がある夏の間に見つめ直したい。
関東地方の40代の女性会社員は以前、当時中学1年の長男が通う学校の教諭から、「息子さんが学校でカッターナイフを持ち歩いているのを見た。自傷の恐れがある」と連絡を受けた。
女性は、長男が学校を休みがちになった時に声をかけたりしたものの、「それほど追い込まれているとは思いもしなかった」と話す。学校側と話し合って危機を脱したが、長男は当時を「お母さんは忙しいから、どう話せばいいか分からなかった」と振り返る。
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厚生労働省によると、2015年に自殺した児童生徒は、小学生6人、中学生102人、高校生241人だった。中学生は1998年以来17年ぶりに100人を超えた。
また、2015年版自殺対策白書によると、1972~2013年の42年間の18歳以下の自殺者を日付別にまとめたところ、9月1日が131人で最多だった。春休み明けや大型連休明けも100人近い日があり、長期休暇が終わった直後の自殺が目立つ。
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文部科学省の「児童生徒の自殺予防に関する調査研究協力者会議」メンバーで、スクールカウンセラーの阪中順子さんは「思春期の子が感じる強いストレスが内に向けば、不登校や引き籠もりにつながることがある。ストレスが極限に至ると、自殺という形で表れかねない」と注意を促す。
特に、長期休み明けは生活環境が大きく変わる。学校をストレスに感じる子には、そこに戻ることのプレッシャーや精神的動揺が強く、自殺につながりやすいとみられる。
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自殺を防ぐには、親はまず、子どもが発するサインに気付きたい。さらに阪中さんは、「子どもが家族の輪に加わらなかったり、自室に籠もったりしても非難せず、家が安心できる居場所だと示してほしい」と説く。
安心すると、子どもは閉ざした心を緩ませて話しかけてくることがある。その際、「詮索はせず、『へえー』と聞き役に徹して」と阪中さん。「『お父さんお母さんは自分を理解しようとしてくれている』と感じ、親を信頼することにつながります」
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ただ、悩みを親に相談しづらい子どももいる。文科省の会議の座長で精神科医の高橋祥友さんによると、そうした子は親友に打ち明けることがあるが、子ども同士では解決策が出にくい。「相談した側は『死ぬしかない』と思い込む。相談された側も相手を一人にできず、『一緒に死のう』という発想を抱きかねない」と指摘する。
こうした事態を避けるため、「日頃から『大人に相談することが大事』と繰り返し伝えて」と高橋さん。担任教諭や養護教諭、スクールカウンセラー、親戚、近所の人など、親以外にも周囲に大人が大勢いると教えておくのだ。
電話で相談できる窓口もある。阪中さんは「悩んだ際の相談先一覧を家の中に貼っておくのも一つの手。当人が電話するきっかけになるかもしれない」と助言する。
子どもの自殺予防の主な無料相談先
- 文科省「24時間子供SOSダイヤル」((電)0120・0・78310、毎日24時間対応) 掛けた人の所在地から都道府県の連携機関につながる。臨床心理士、教員OB、精神保健福祉士らが相談に応じる。大人が相談してもよい
- NPO法人チャイルドライン支援センター「チャイルドライン」((電)0120・99・7777、月~土曜の午後4~9時) 18歳以下対象。一定の研修を受けたボランティアが相談に応じる
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