なぜ乗り物に酔う?…揺れ、耳の感知に目が不適応
夏休みの旅行を前に、ドライブやバスツアー、クルージングでの乗り物酔いを心配する人もいるのでは。人はどうして乗り物で酔うのだろう。
地域医療機能推進機構東京新宿メディカルセンターの耳鼻咽喉科部長、石井正則さんは「酔いは、内耳の情報と眼球の動きのズレによって起こる」と説明する。
耳の奥の内耳には三半規管があり、揺れや振動、傾きを感知して脳に伝えている。この情報は目にも伝わり、揺れに連動して眼球が動く。見ようとするものが止まって見えるよう、内耳からの揺れの情報に応じて微調整しているのだ。
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日頃感じる程度の揺れなら、目は対応できる。だが、急発進、急カーブなど慣れない揺れが続くと、目は追いつけなくなる。内耳からの情報と目の動きがズレることにより、脳内は混乱する。目を閉じたままでも同じだ。地面に立てたバットの先に額を当ててグルグル回ると、目を閉じていても目が回る。慣れない動きが内耳から伝わり、目が対応しきれなくなるのだ。
ズレが起こると、脳が「異常」と判断し、自律神経が不安定になる。循環器や消化器などの活動を調整する自律神経が乱れることで、吐き気や頭痛など、酔いの症状が表れる。
運転者が酔わないのは、車の動きを予測し、カーブに合わせて体を傾けるなど、内耳の情報と目の動きを無意識に一致させているためだ。慣れた道を通る時は、同乗者も揺れが予測でき、酔いにくい。
このズレ以外にも、脳や自律神経に悪影響があると、さらに酔いやすくなる。排ガスの臭い、睡眠不足、疲れなどだ。中でも大きいのは「酔うんじゃないか」という不安感。乗り物への苦手意識や過去の車酔いの記憶が、脳を通じて自律神経を不安定にし、実際に酔ってしまう。
このため、梅干しをへそに貼るなどの迷信的な酔い止め策も「本人が信じていれば、一定の効果がある」と石井さんは話している。
【AD】”のりもの酔い”の原因
クルマや船など、急に動いたり不規則に揺れたりするのりものに乗ると、景色と平衡感覚、体感などの認識がアンバランスになり、自律神経が乱れます。自律神経は心臓や胃、汗腺などに影響を与えるので、動悸が激しくなったり、気持ちが悪くなったり、冷や汗がでたり・・・といった症状が出てくるのです。
遠くを眺めて防ぐ
酔いを防ぐには遠くの山などを眺めるとよい。本やスマートフォンの文字など揺れる一点を見つめていると、途切れない揺れの情報に目の動きが対応できなくなる。遠くの景色なら、車が揺れても景色は動かないので、目もついていきやすい。車やバスなら、進行方向が見える前方の席を選び、運転者のようにカーブに合わせて体を傾けるなどすれば酔いにくい。
酔ってしまったら、リラックスするなどして自律神経を安定させるのが一番だ。
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「シートを倒して横になりましょう」と石井さん。窓を開けて風を浴びたり、船なら甲板に出て空気を吸ったりするのもよい。氷を口に入れると、冷たい水が胃に流れ、むかつきを抑える。あごを動かすと胃の働きが正常化するので、ガムをかむのもお勧めだ。
一方、子どもが酔うからといって乗り物に乗せないのは、苦手意識を強めるだけだ。石井さんは「酔い止めを飲んだり、短時間だけ乗ったりしながら少しずつ慣れさせましょう」とアドバイスする。
乗り物酔いを防ぐには
- 十分に睡眠をとって乗る。空腹や食べ過ぎの状態では乗らない
- 不安が強いなら酔い止めを事前に服用
- きついネクタイやベルト、体を締め付ける服は着ない
- 車は助手席、バスなら進行方向が見える前方の席へ。船は揺れが少ない中心部の、景色が見える席を選ぶ
- ゆっくり深呼吸し、リラックスする
- 本やスマホは見ず、遠くの景色を見る
- 乗っている最中は頭をグラグラ揺らさない
- 時々換気し、新鮮な空気を吸う
(石井さんの話をもとに作成)
“のりもの酔い”を予防しよう!! ほけんだよりプラス
「楽しい思い出、いっぱいつくろー!」 キャンプや釣りに遊園地、田舎のおじいちゃんやおばあちゃんの家に行く人もいるのかな?バスや車に乗る機会が増える季節ですが、「のりもの酔い」対策は大丈夫? のりものに乗る前に、ちょっとした注意を守って「のりもの酔い」を予防しましょう!
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