6難病研究、iPSで光…薬の候補物質発見、治験へ
iPS細胞(人工多能性幹細胞)を使って難病の治療開発を進めている京都大と慶応大が、筋肉が骨に変わる「進行性骨化性線維異形成症(FOP)」など6疾患の薬の候補物質を見つけたことが、研究を支援する国立研究開発法人「日本医療研究開発機構」(東京)の調べでわかった。
いずれも他の病気の治療に使われている医薬品で、両大学は今後、臨床試験(治験)などを行い、実用化を目指す。
両大学は、6疾患の患者の血液などから作ったiPS細胞を、病気の特徴を再現した体細胞に変化させ、様々な薬の候補物質を加えて治療効果を調べた。
6疾患のうち、「FOP」、低身長になる「軟骨無形成症」、低身長で呼吸不全を招く「タナトフォリック骨異形成症」の骨に関する3疾患は、京都大が候補物質を見つけた。軟骨無形成症やタナトフォリック骨異形成症の患者のiPS細胞は、軟骨に変化させると通常は異常な軟骨細胞ができるが、コレステロール降下剤「スタチン」を加えると、正常な軟骨細胞になるという効果があったという。
他の3疾患は、子供の頃から難聴が生じる「ペンドレッド症候群」、全身の筋肉が衰える「家族性筋萎縮性側索硬化症」、心臓の筋肉が厚くなり、不整脈などを起こす「肥大型心筋症」で、慶応大が見つけた。
同機構によると、これらの候補物質は既存の医薬品だが、難病患者に投与した場合の効果や副作用は未知数で今後、動物実験や治験で慎重に調べた上で実用化を目指す。研究者らは「自己判断での服用は絶対にやめてほしい」と呼びかけている。
創薬へ成果、課題は資金
iPS細胞(人工多能性幹細胞)を使った難病研究で、6疾患の薬の候補物質が見つかったのは、iPS細胞が創薬研究に役立つ可能性を具体的に示す成果として注目される。
iPS細胞の医療応用は、失われた臓器や組織の機能を取り戻す「再生医療」と、患者の細胞で病気を再現して薬の候補を探す「創薬」研究が大きな柱だ。再生医療に比べると創薬研究は支援が少なかったが、研究者らが重要性を繰り返し訴え、国は2012年度から支援を強化してきた。
課題は治験費をどう捻出するかだ。6疾患の候補物質は既存の医薬品とはいえ、数千万円~億単位の資金が必要となる。難病は患者が少なく、利益が見込めないなどの理由で製薬企業が治験を行うことは少ない。今回も医師主導で行うケースが多く、効果が確認できれば、既存薬の適用拡大を厚生労働省に求めていく。
難病患者の「希望の光」でもあるiPS細胞の研究成果を生かすため、寄付の推進や治験効率化によるコスト削減など、治験費の捻出に知恵を絞りたい。
(大阪科学医療部 竹内芳朗)
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