組み体操 死亡事故教訓に 指導者向けDVD復刻
事故多発が問題となった組み体操を学校で正しく教えてほしいと、日本体育大体操研究室(東京都世田谷区)の荒木達雄教授が、指導者向けのDVD「安全で楽しい組立体操の基本」(大修館書店、全四巻)を発売した。二十六年前に起きた組み体操の死亡事故を教訓に作られたDVDの復刻版。荒木教授は「亡くなった生徒と遺族の無念を忘れないで」と訴える。 (細川暁子)
死亡事故は相模原市の中学校で一九九〇年九月に発生。四段タワーが揺れ、下から二段目にいた三年生の浦野剛君が落下。浦野君の上に別の生徒が落ち、浦野君は胸部圧迫による心臓破裂で亡くなった。教師九人が補助についていたが、タワーの高さは六メートル以上あり、落ちたら危険な状態だった。
荒木教授によると、事故の数カ月後に荒木教授は浦野君の父親と面会。中学生に四段タワーを実施させることについて意見を求められ、「危険なので、日体大の学生でも行わない」と答えた。父親は「教師を目指す学生には、安全な指導を行うように徹底してほしい」と要望。後日、父親は事故を検証した手記を出版した。
父親の願いとは裏腹に、二〇〇〇年ごろから組み体操の高層化が全国的に目立つようになり、荒木教授は危機感を抱いてDVDを販売した。
近年は動画投稿サイトの普及で高さを競う傾向がさらに強まり、年間八千五百件以上の事故が起きているとして、国は今年三月に注意喚起した。安全指導を徹底してほしいと、荒木教授はDVDを復刻することにした。
小中学生は「2段まで」
DVDは、幼児から高校生までを対象に、高さがなくても見栄えのする組み体操の技や、指導上の注意点を紹介している。
例えば、肩の上に立つ「タワー」は、下段が背中を丸めて肩を組む方法は、下段に負荷がかかりやすく、上段は落下しやすいため誤りと指摘。背中を真っすぐ伸ばして肩を組むのが大切と強調する。
荒木教授によると、小中学生の体力を考えれば、タワーは二段までが妥当。だが群馬県が同県内の小中学校を対象にした調査では、昨年度に六段タワーを実施した小学校があり、国の注意喚起後の本年度も五段タワーを実施予定の小学校があるという。
荒木教授は「五段、六段のタワーなど論外で、絶対にやってはいけない。死亡事故を教訓に危険は避け、安全で楽しい組み体操を行ってほしい」と話す。
DVDでは一巻冒頭で、荒木教授が「指導者の虚栄心を満たすために、難易度や高さを追求してはいけない」「事故はあってはいけない」と強調している。
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