乳幼児の重症化防げ せきや高熱…RSウイルス感染症
秋から冬にかけて乳幼児を中心に流行するRSウイルス感染症の患者数が増加している。今月11日までの1週間に報告された患者数は、今の統計方法になった2012年以降で最多(同期比)。乳幼児の場合は重い肺炎などを起こして入院するリスクが高いため、専門家は「小さな子どもがいる家庭では、日頃から手洗いなどの対策を」としている。
さいたま市の女性(32)の長女(当時九カ月)は昨年十二月、軽いせきと鼻水の症状が出た。「風邪をひいたかな」と女性は思ったが、長女は十日後から急に四〇度の高熱を出したため、小児科を受診。その後も高熱が三日間続き、嘔吐(おうと)もするようになったため入院し、RSウイルス感染症と診断された。入院は八日間に及んだ。
女性は「自宅で看病していたら、良くなるどころかどんどん病状がひどくなった。呼吸があまりにも苦しそうで、死んでしまうのではないかと思った」と振り返る。長女の前には、上の兄二人がRSウイルスに感染しており、三歳の次男も高熱が出た一方で、六歳の長男は鼻風邪程度だった。
東京都立小児総合医療センター感染症科医長の堀越裕歩さん(41)は「乳幼児は急激に病状が重くなる場合が多く、状態の急変に注意が必要です」と話す。
国立感染症研究所(感染研)によると、RSウイルス感染症は一歳までに六割の子が、二歳までにほとんどの子が感染する。ただ、はしかや水ぼうそうなど、一度かかると免疫ができてかかりにくくなる病気と違い、繰り返し感染するのが特徴だ。
感染後、四~五日の潜伏期間をへて、三八~三九度の発熱や鼻水、せきなどが出る。健康な大人は、鼻からのどまでの上気道に炎症が出るだけで終わることが多い。重症化すると、気管や肺など、より深い下気道にまで症状が広がり、細気管支炎や肺炎などを起こす。
初めて感染する一歳未満の乳児や、心臓や呼吸器などに病気がある子ども、高齢者は重症化のリスクが高い。呼吸が苦しくなった場合は入院が必要になり、先進国では乳幼児が入院する主な原因となっている。
有効な抗ウイルス薬はない。入院しても酸素吸入や気管支を広げる薬の投与など、呼吸を助ける治療で自然回復を待つしかないという。医薬品メーカー「アッヴィ合同会社」(東京都)が、RSウイルス感染症で入院した三歳未満の子どもを持つ親百三人に聞いた調査では、最初に症状が出てから入院までの期間の平均は二・九日で、入院期間の平均は六・七日だった。
感染者のくしゃみやせきなどの飛沫(ひまつ)を吸い込んだり、ウイルスが付いたものを手で触り、目や鼻の粘膜に付着したりすることで感染する。堀越さんは「対策はなるべく感染しないこと」と指摘して、「重症化するリスクが高い乳幼児がいる家庭では、日常的に手洗いを心掛け、せきが出るときにはマスクをするなどの対策をしてほしい」と呼び掛ける。
感染研のまとめによると、全国約三千の小児科医療機関から報告された患者数は、九月五~十一日で三千三百四十七人。例年、年末にピークを迎えることから、注意を呼び掛けている。
(稲田雅文)
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