身体冷却法 – 熱中症シリーズ
熱中症において、よく見られる症状の一つが体温上昇(高体温)です。熱中症は重症度によってⅠ~Ⅲに分類されますが、熱中症が重症化すると、40℃超の高熱が見られることがあります。これは重症度Ⅲにあたり、熱射病とも呼ばれます。人間は体が熱を産み出す働き(産熱)と体から熱を逃がす働き(放熱)のバランスで体温を調節しています。体温より気温が高い場合には、汗を出して気化することで体温を平常に保ちます。熱中症の初期段階では、汗が出ているため体温の上昇が伴わないこともありますが、大量の汗をかき、体内の水分が失われると、それ以上汗をかくことができず、体温が上がっていきます。熱中症によって体温が上昇する状況は、汗をかくことによる体温調節機能が失われているため、生命の危機的ラインとされる42℃を超える高熱につながることもあります。
冷却の場所
体表近くに太い静脈がある場所を冷やすのが最も効果的です。なぜならそこは大量の血液がゆっくり体内に戻っていく場所だからです。具体的には、前頚部(ぜんけいぶ)の両脇、腋の下、足の付け根の前面(鼠径部)等です。そこに保冷剤や氷枕(なければ冷えたペットボトルやかち割り氷)をタオルでくるんで当て、皮膚を通して静脈血を冷やし、結果として体内を冷やすことができます。冷やした水分(経口補水液)を摂らせることは、体内から体を冷やすとともに水分補給にもなり一石二鳥です。また、濡れタオルを体にあて、扇風機やうちわ等で風を当て、水を蒸発させて体を冷やす方法もあります。熱が出た時に額に貼る市販のジェルタイプのシートは、体を冷やす効果はありません。
社会人ラグビー部の冷却方法
富士通フロンティアーズでは、熱中症の身体を冷却するために選手を冷水に入れて急激に体温を下げる冷水浴が行われています。冷水浴は、熱中症の発生を前提としてバスタブを用意し、熱中症が疑われる選手が出るとバスタブに大量の氷を入れて冷水を作り、選手を入浴させます。冷水の温度は20℃以下で効果がありますが、最も効果的な2℃~5℃の冷水が推奨されています。冷水浴を行う場合には、意識が朦朧とした選手が溺れないよう、体を支えるサポートが必要です。
体表からの冷却方法
- 氷枕・氷のう
氷枕や氷のうを前頚部の両脇、腋窩部(腋の下)、鼠径部(大腿の付け根)に置きます。体表に近い太い血管内を流れている血液を冷やします。 - 冷却マット
冷水を通したブランケットを敷いたり掛けたりします。 - 蒸泄法
水を浸したガーゼを体に広く載せて、扇風機で送風します。アルコールはアレルギーの方がいるので用いられなくなりました。 - ウォームエアスプレー法
全身に微温湯または室温水を露状の水滴として吹きつけ、扇風機で送風します。
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