RSウイルス感染症患者増加 手洗い、うがいなどの予防が重要
発熱やせきなどの症状から始まる「RSウイルス感染症」の患者数が増加し、流行期に入った。国立感染症研究所(東京都新宿区)の統計によると、35週(8月29日~9月4日の1週間)に全国の約3千カ所の定点医療機関から報告された感染者数が過去5年で最多となる2725人。例年より1~2週間早く1週間当たりの感染者数が2千人を超えた。特に乳幼児は重症化のリスクが高いため、注意が必要だ。(中井なつみ)
症状が急変
埼玉県川口市の公務員の女性(35)は、8月末に長男(2)がRSウイルスに感染した。最初は軽いせきが出る程度だったが、数日後の深夜、39度を超える高熱が出た。せきも止まらなくなったため救急外来を受診すると、その場で入院が決定した。
女性は「最初のうちは単なる夏風邪だと思っていた。早くから受診していれば、ここまでひどくならずに済んだかも」と悔やむ。長男は8日間入院し、吸入治療などを受けた。
乳幼児は高リスク
RSウイルスは、風邪の原因となる一般的なウイルスの一つ。1歳までにほぼ半数以上、2歳までにほとんどの子供が感染する。持続的な免疫ができにくく、大人になってからも感染を繰り返す。流行期は地域による差が大きく、夏場に沖縄県など南の地域で感染が広がり、秋から冬にかけて本州に移行する。35週の時点では、東京都(312人)、大阪府(190人)、神奈川県(156人)など都市部での感染が目立った。
発熱や鼻水、せきなどの症状が数日続くだけで済む人も多いが、初めて感染した乳幼児は重症化しやすいので注意が必要だ。高熱のほか、肺炎や気管支炎を併発して呼吸困難になることもある。
感染研感染症疫学センターの木村博一第6室長(ウイルス学)は、「初めて感染した乳幼児の数%が、入院に至るまで悪化する」と話す。ぜんそくなどの呼吸器疾患がある人や、高齢者も重症化のリスクが高い。
効果的な治療薬なし
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RSウイルスには、ワクチンや効果的な治療薬がないのが現状だ。そのため、手洗いやうがいなどの予防が重要となる。
日本小児科医会理事を務める峯小児科(さいたま市)の峯真人院長は「RSウイルスは感染力が強い。家族間で感染が拡大しやすいので注意して」と話す。
症状が軽く、感染に気付いていない大人が乳幼児と接触して広げてしまう危険もある。せきなどの症状がある場合は、マスクを着用してウイルスの飛散を防いだり、子供が触りそうな場所をアルコール消毒したりする対策が有効という。
峯院長は「RSウイルス感染症は急に悪化することがあるのも特徴。感染したらこまめに通院して経過を見てもらうなど、油断しないようにしてほしい」と話している。
乳幼児を育てる親の多くが、RSウイルス感染症に対する知識を持っていないのが現状だ。
医薬品メーカーの「アッヴィ合同会社」(東京都港区)が6月、2歳未満の子供がいる保護者1800人を対象に調査を実施。その結果、全体の約6割が「RSウイルス感染症がどのような病気か詳しく知らない」と回答した。「名前も知らない」という人も約2割いた。
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