生後当日の虐待死 どうすれば減らせるか?
あまり曜日感覚がなかったのですが、世間はシルバーウィークなのですね。今日で息子は生後10か月になりました。つかまり立ちから手を離すと2秒くらいは自立しています。ひとり立ちまでもうすぐです。食欲がすごく旺盛で、食卓を囲んでいると自分だけ違う食事であることに怒って 吠ほ えています。最近は娘が、弟がパクパク食べるのを面白がって離乳食を食べさせてくれるので、娘にお任せして親はご飯をゆっくり食べています。汚れが激しいのが難点ですが……。
3歳以下が9割、0歳も半数超え
先週(9月16日)、厚生労働省が2014年度の虐待死の検証結果を公表しました。亡くなった18歳未満の子どもは71人で、無理心中を除くと44人でした。3歳以下が9割近くで、0歳が27人で半数を超えました。そのうち15人は生後0日での虐待死だということです。
加害者は実母が28人で一番多く、実父が3人でした。亡くなった44人の子どもの実母のうち、「望まない妊娠」だったのは24人。生後0日の虐待死15人のうち、14人の母親は「望まない妊娠」で、11人は母子手帳ももらわない「未受診妊婦」でした。
この結果をもとに、「欲しくないのにセックスをして妊娠するからこういうことになる」「妊娠について無知であることが原因だ」という感想を持たれる方も多いと思います。義務教育や家庭教育でバースコントロールについて十分に教えられているとは言えないため、そういう考えも成立します。
ですが、たとえ知識があっても低用量ピルやアフターピルは安価ではなく、医療機関を受診しないといけないため、女性が避妊法にアクセスしやすいとは言えないのが日本の現状です。こちらは1万円は下らないというアフターピルの価格を下げるなど、改善の余地がかなりあると思います。
支援の手にどうつなぐか
望まぬ妊娠をしても、人工妊娠中絶が可能な週数で医療機関を受診したり、間に合わない場合は妊婦健診を受けたりすれば、ソーシャルワーカーや行政へつなぐきっかけとなり、なるべく安全な施設での出産や、育児支援、乳児院への入所、養子縁組など何らかの対処で、虐待死という最悪な結果は免れることができると思います(妊婦さんの社会的背景も問診してフォローするという意識のある医療機関を受診した場合ですが)。でも、医療機関を受診しないままだと、私たち周産期医療がサポートを届けることはできません。
大阪府の にんしんSOS など予期せぬ妊娠をした女性の相談窓口を設け、アクセスしてもらおうという試みもなされていますし、厚生労働省も同様の事業を始めるとのことです。しかし、幅広く周知されるのはなかなか難しい上に時間もかかるでしょう。予期せぬ妊娠をした人が誰かに相談することのハードルの高さもあります。妊娠したことを認めたくないあまり、お腹が大きくなるまで月経が来るのを待っている、ということも珍しくありません。
望まぬ妊娠をさせた男性にも責任を!
避妊へのアクセス、妊娠した女性の相談窓口へのアクセスは必要ですが、妊娠は女性だけでは 出来でき ない以上、いつまでも妊娠した女性だけに責任や罪を負わせていてはいけないと思います。「望まぬ妊娠」や虐待死の影には、セックスして女性を妊娠させた男性がおり、場合によっては妊娠させたことに気付いてもいないか、気付きながら逃げたという事実があるわけです。彼らには、セックスした相手が妊娠したり、自分が養育に関わらなければ孤立して困窮したりするだろうということが想定できないわけはないでしょうから、未必の故意だと言えると思います。
現在の法律では直接、虐待に関わらなかった男性は罪に問えませんが、妊娠する性である女性だけが重い罪に問われるのは不平等ですし、予防の観点からも男性も罪に問えるようにしてほしいです。外来で日常的に「妊娠したけれど、それを伝えたら相手の男性と連絡が取れなくなった」という女性の声を聞く身からすると、法改正をしてDNA鑑定でもなんでもしてほしいですね。そして、セックスとはどういう結果をもたらす行為なのか、思春期の男女に実用的な情報も伝える仕組みが急務だと思います。
今回の厚労省の検査結果は、生後0日の虐待死は「望まぬ妊娠」、未受診妊婦、医療の管理のない出産による赤ちゃんが多かったという結果で、意外性はありませんが、検証結果を今後の予防に役立てるために本気の対策をお願いしたいと思います。
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