会話が心の栄養に – 編集委員 辻 恵介
「生活保護費以下の収入で暮らす子育て世帯の割合が13・8%となり、1992年から20年間で倍増」という調査結果が公表されたのは3月1日のこと(同2日付12面既報)。山形大の戸室健作准教授が公表したもので、39都道府県で「子どもの貧困率」が10%以上となり、西日本と東北から北の地域で比較的高い傾向がみられるという。
就業しても最低生活費以下の収入しか得ていない、いわゆる「ワーキングプア世帯」の割合が高い地域は、貧困世帯の割合も高いと戸室准教授は分析している。格差社会の拡大が言われて久しいが、その厳しい現実の一部を象徴した数字となっている。
都道府県別のデータが出たのは今回が初めてで、近畿では大阪21・8%、和歌山17・5%、京都17・2%、兵庫15・4%、奈良11・7%、滋賀8・6%の順だった。
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そんな社会情勢の中、民間主導の取り組みとして「子ども食堂」の運動が全国的に拡大している。貧困状態に置かれている子どもの増加を背景に、「子どもたちに無料、または安価で食事を提供する」というものだ。
首都圏を中心に始まった取り組みだが、県内でも斑鳩町、生駒市などで住民らが開設。運営のための寄付や食材提供など側面から支える動きも活発化し、地域で子どもを育てる取り組みの輪が広がっている。
場所は一般の民家、お寺や神社、公民館、児童館などさまざま。子どもにとっては、定期的に栄養のある食事を提供してもらったり、自分たちでも一緒に料理を作ったりすること、また一人(孤食)ではなく大勢の中で、会話をしながら食事をすることは新鮮な体験となるに違いない。楽しい雰囲気を味わいながら食べることで、心の栄養にもなる場ということになるだろう。
公益の情報紹介団体「奈良こども食堂ネットワーク」のホームぺージには、斑鳩町、生駒市、天理市、上牧町、大和高田市、橿原市の6組織の活動状況が紹介されていて、後に続く人たちには大いに参考になる。
今後も各地で開設されるだろうが、継続させていくためには、行政、各種団体などを含めた活動資金援助や食材の提供が欠かせない。もちろん、安全面や衛生面への配慮も必要だ。
地域で子どもを支えようという思いが広がり、「気軽に立ち寄れる居場所」づくりが前に進んでいくことに期待する。何より、子どもたちの笑顔が増えて、元気に育っていってほしい。
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