回帰熱 – ダニ媒介感染症シリーズ
回帰熱は、ボレリア属の細菌「ボレリア・ミヤモトイ(Borrelia miyamotoi)」を保有するマダニ類に咬まれることによって細菌が体内に侵入し、感染します。感染すると、主に、発熱や頭痛、筋肉痛など風邪のような症状が出ます。回帰熱には、シラミによって媒介されるものとマダニによって媒介されるものの2つのタイプがあります。シラミ媒介性の回帰熱は、主に戦争や飢饉等によって衛生環境が悪化した際に見られる感染症で、世界でも限られた地域でのみ流行しています。一方、マダニ媒介性の回帰熱は、世界の多くの地域で発生が見られます。ヒトからヒトに感染することはなく、動物から直接感染することもありません。
回帰熱の症状
回帰熱は、発熱、頭痛、悪寒、筋肉痛、関節痛、全身の倦怠感などの症状が主で、時に、神経症状(意識障害、けいれん、昏睡)、リンパ節腫脹、呼吸不全、出血症状(歯肉出血、紫斑、下血)が出現します。潜伏期間は、マダニに刺された後、12~16日程度(平均15日)です。
回帰熱の病原体
回帰熱の病原体は、ボレリア・ミヤモトイで、1995年に北海道で発見されました。2011年にロシアで、さらに2013年に米国でボレリア・ミヤモトイを原因とする回帰熱が報告されました。日本では、2011年以降に、北海道でボレリア・ミヤモトイ感染による回帰熱の患者2名が発生しました。ボレリア・ミヤモトイは主にシュルツェマダニが媒介します。このマダニは、主として本州中部以北の山間部や寒冷地に生息していますが、北海道では平地でも見られます。これらマダニは春から秋にかけて活動的になります。我が国では、シュルツェマダニの1-5%程度がボレリア・ミヤモトイを保有しています。
シュルツェマダニ – 体長は、吸血前で3mm、吸血後で5-10mm程度。
回帰熱の治療・予防
回帰熱の治療には、テトラサイクリン系の抗菌薬(ミノサイクリン、ドキシサイクリンなど)の投与が有効です。これまでに回帰熱による死亡例は報告されていません。回帰熱の予防としては、ダニに咬まれないようにすることが重要です。ダニに咬まれないことで予防できる疾患は、回帰熱だけではなく、つつが虫病、日本紅斑熱、ライム病、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)、アナプラズマ症などがあります。マダニは春から秋にかけて、またツツガムシは全国的に通年で活動が見られます。草むらや藪など、マダニが多く生息する場所に入る場合には、長袖・長ズボン(シャツの裾はズボンの中に、ズボンの裾は靴下や長靴の中に入れる、または登山用スパッツを着用する)、足を完全に覆う靴(サンダル等は避ける)、帽子、手袋を着用し、首にタオルを巻く等、肌の露出を少なくすることが大事です。服は、明るい色のもの(マダニを目視で確認しやすい)がお薦めです。また、DEET(ディート)という成分を含む虫除け剤の中には服の上から用いるタイプがあり、補助的な効果があると言われています。屋外活動後は入浴し、マダニに刺されていないか確認してください。特に、わきの下、足の付け根、手首、膝の裏、胸の下、頭部(髪の毛の中)などがポイントです。
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