<長野県>信州で甘酒人気拡大 ノンアルコールで高栄養価
ワインや日本酒の聖地と自負する信州。県が今年度からものづくり振興課に「日本酒・ワイン振興室」を設置するなど官民挙げて地酒や醸造文化のさらなる普及に取り組む中、栄養価が高く「飲む点滴」とも称される甘酒が注目を集めている。ノンアルコールの甘酒は、酒が苦手な人にも手に取ってもらいやすい。提供する酒蔵や飲食店は「信州の発酵食品の知名度アップにもつながる」と期待を寄せている。(三宅真太郎)
酒蔵ならでは
日本酒「渓流」で知られる遠藤酒造場(須坂市)が販売する「造り酒屋の甘酒」は本格的な甘酒として定評がある。一口飲むと広がるのは、酒米と米麹が醸し出す甘みと香り。のどごしがよく後味もすっきりとしている。
「あえて米粒を残すことで食感も楽しんでいただけるようにした。穀物本来の味を生かした本格的な甘酒です」
6代目の遠藤秀三郎社長(55)は胸を張る。
酒蔵ならではの製法を売りとする。調味料や砂糖、アルコールなどは一切使わず、米麹と、70%まで精米した国産酒米だけで甘酒をつくることで、米本来の味と風味を楽しめるのだ。
15年ほど前に店の片隅に並べた甘酒は今や、「渓流」と並ぶ看板商品に育った。平成27年の出荷本数は5年前の30倍超となる約7万7千本に達した。今年3月には300本を台湾に輸出したが「あっという間に売り切れた」と遠藤社長。テレビ通販に出せば予定数が即完売の人気だという。
「正直に言えば一番売りたいのは日本酒だが、酒が苦手な人が発酵飲料に興味を抱くきっかけになればいい。ブームで終わらせないよう甘酒にも磨きをかけていきたい」
遠藤社長はそう意気込む。
「醗酵カフェ」
翻って信州の玄関口・長野駅の駅ビル「MIDORI長野」では、甘酒を用いたソフトクリームやラテ、スムージーなどが楽しめる「醗酵カフェ『醸(かもす)』」が観光客らに好評だ。
人気メニューの一つ「甘酒ソフトクリーム」は、牛乳に甘酒を加えた。ほんのりとした甘さにチーズケーキのような風味が鼻に抜けるのが特徴だ。県内産のイチゴやブルーベリーを使ったスムージーは、注文後に作りたてを提供する。時期によってはリンゴやソバ、モモなどの味の商品も並ぶ。
醗酵カフェは「醸造、発酵文化を広く伝える」をテーマに27年3月の北陸新幹線金沢延伸開業に合わせて登場した。信州を訪れる観光客に年齢や性別を問わず“発酵食品”の魅力を伝えようと、ノンアルコールの甘酒を使ったさまざまな商品をそろえた。
最近は、女性を中心に若い世代の来客が多く、甘酒関連の商品だけで1日に200個近く売れる日もあるという。
同店の松下昌靖店長(41)は「甘酒が苦手な人も、フルーツや牛乳と合わせて飲んだら新たな発見に気付くはず。甘酒の魅力を広く伝えていきたい」と語った。
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【用語解説】甘酒
日本の伝統的な甘味飲料。米に米麹を入れて発酵させてつくる甘酒はノンアルコールで、でんぷんの甘みを感じることができる。酒粕を湯に溶かして砂糖などを加えてつくる甘酒にはアルコールが含まれる。最近、人気を集めているものはアルコール度数が1%未満で、ソフトドリンクに分類されている。
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